滋賀県医療勤務環境改善支援センター

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Q&A

本資料の作成に当たっては、当センターのアドバイザーによる医療機関訪問や相談対応を通じて伺った内容とともに、他府県センターのQ&Aも一部活用させていただき、内容の充実に努めました。
特に、鹿児島県医療勤務環境改善支援センター様には、構成等も含め大いに活用させていただきました。突然のお願いにもかかわらず快くご承諾いただき、感謝申し上げます。ありがとうございました。

目次

目次の質問項目をクリックすると、該当のページにジャンプします。ご活用ください。

1. 労働時間管理に関すること

①時間外労働協定(36協定)

②勤務時間・休日・休憩・勤務シフト

③年次有給休暇

④夜勤

⑤その他(宿日直・WLB・育児休業給付金)

2. 健康管理に関すること

①健康確保・健康診断

②メンタルヘルス

3. 職場の環境整備に関すること

①いじめ・ハラスメント等

②職場内施設の整備

③その他(職場の環境整備)

4. 労働条件等に関すること

①労働契約等

②就業規則・給与制度・人事制度

③その他(労働条件等)

5. 働き方改革に関すること

① 時間外労働の上限規制

②タスク・シフティングの推進

③年5日の年次有給休暇の確実な取得

④同一労働同一賃金

⑤労働者派遣

⑥その他(働き方改革)

6. その他の労務管理Q&A

回答

1. 労働時間管理に関すること

①時間外労働協定(36協定)

残業をする場合は36協定が必要とのことですが、どのようなものですか?

労働基準法では労働時間は原則として1日8時間及び1週40時間以内(「法定労働時間」と言います)で、休日は週1回又は4週4日と定められています。職員にこの時間を超える残業や休日出勤をさせるためには、病院と職員の代表者とで「36協定」を締結し、所轄の労働基準監督署に届出をしなければなりません(締結だけでは足りず、労働基準監督署への届出まで必要です)。

36協定は正確には「時間外・休日労働に関する協定」と言います。36協定の呼び名は、労働基準法36条に規定があることから来ています。
36協定を結ばず、届出もすることなく、職員に法定労働時間を超える残業・法定休日に労働させたら法律違反となり、6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金の対象になります。また協定した制限時間を超えて働かせた場合も同じです。また36協定が締結・届出がされていない場合、例え残業代をちゃんと支払ったとしても法律違反は免れません。

なお、36協定が必要なのは「法定労働時間」を超えての残業をさせる必要がある場合であり、「所定労働時間(就業規則や雇用契約書で定められた始業時間から終業時間まで(休憩時間を除く)の労働時間)」を超えても、法定労働時間を超える労働がない場合は不要となりますが、法定労働時間を超える可能性があるのであれば前もって締結・届出をしておくべきです。
詳しくは労働基準監督署にお問い合わせください。

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36協定は誰と結べばいいのですか?

労働基準法で規定する各種労使協定の労働者側の協定当事者は、事業場の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、組合のない場合等は事業場の労働者の過半数を代表する者となっています。しかし、実態は病院の利益を代表する管理職等がこれになっている例が多くみられるようです。

現在、労働基準法施行規則第6条の2において、過半数代表者の要件が明確に定められており、次のいずれにも該当する者となっています。

  1. ①監督または管理の地位にある者でないこと
  2. ②協定を結ぶことをする者と明らかにして実施される投票、挙手等の手続きにより選出された者であり、使用者の意向に基づき選出された者でないこと

なお、使用者は、労働者が過半数代表者であることや過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをしてはならないとされています。

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労働者代表の責任は?

36協定の締結は、法定労働時間を超えて労働(時間外労働)できるようにするため労使で協定するものですが、前述のとおり、
労働者代表は、

  1. 1)使用者の意向に基づいて選任された者でないこと
  2. 2)管理監督者でないこと

とされ、一方、使用者においては、法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないとされています。
したがって、労働者代表は、労働者団体の意思を取りまとめ提言する役割であって、仕事を与えたのは使用者ですから、36協定を守れなかった責任はすべて使用者にあるということです。

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「特別条項」とはどんなもの?どんな手続きが?

時間外労働の上限について、大企業は2019年4月以降、中小企業は2020年4月以降の協定から法律上、原則として月45時間・年360時間となりました。(医師については2024年(令和6年)3月31日までの間は、適用されません)

但し、臨時的な特別の事情があるため、原則となる時間外労働の限度時間(月45時間・年360時間)を超えて時間外労働を行わせる必要がある場合には、通常の36協定届(様式第9号)に加え、さらに以下の事項について労使が合意して協定した上(特別条項)で、限度時間を超える場合の36協定届(様式第9号の2)を所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。

  1. ①臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合における
    • 1か月の時間外労働+休日労働の合計時間数 (100時間未満)
    • 1年の時間外労働時間 (720時間以内)
  2. ②限度時間を超えることができる回数(年6回以内)
  3. ③限度時間を超えて労働させることができる場合
  4. ④限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置
  5. ⑤限度時間を超えた労働に係る割増賃金率
  6. ⑥限度時間を超えて労働させる場合における手続

今回の法改正では、この上限時間内で労働させた場合であっても、実際の時間外労働と休日労働の合計が、月100時間以上または2~6か月平均80時間超となった場合には、法違反となります。このため、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とすることを協定する必要があります。36協定届の新しい様式では、この点について労使で合意したことを確認するためのチェックボックスが設けられています。

そして③限度時間を超えて労働させることができる場合とは、「臨時的な特別の事情がある場合」に限ります。限度時間(月45時間・年360時間)を超える時間外労働を行わせることができるのは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加など、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められません。

また、④健康・福祉確保措置の内容については、以下のものから定めることが望ましいことに留意してください。

  1. ①医師による面接指導
  2. ②深夜業(22時~5時)の回数制限
  3. ③終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  4. ④代償休日・特別な休暇の付与
  5. ⑤健康診断
  6. ⑥連続休暇の取得
  7. ⑦心とからだの相談窓口の設置
  8. ⑧配置転換
  9. ⑨産業医等による助言・指導や保健指導

医師については2024年(令和6年)3月31日までの間は延長時間について上限はありませんが、時間外労働を行うにあたっては36協定の締結と届出は必要であり、延長できる時間もその協定に定められた時間までとなります。不必要な時間外労働を抑制する意味からも、できる限り短い延長時間とするようご留意ください。36協定届は「適用猶予期間中における、適用猶予事業・業務に係る時間外・休日労働を行わせる場合」の様式第9号の4を使用できます。
その他詳細については、厚生労働省が作成したパンフレット「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」をご覧ください。

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36協定の対象期間は?

36協定の対象期間については、賃金締切日にかかわらず起算日を毎年4月1日としている例が見られます。1か月の時間外労働時間は賃金締切日に計算するのが普通ですから、時間外・休日労働時間を管理するうえで36協定の対象期間を賃金計算の対象期間と一致させておくことが必要です。2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)から時間外・休日労働の上限がこれまでの限度基準(大臣告示)から罰則付きの法律による規制となりました。次回の36協定を締結する際には、対象期間を「年度最後の賃金締め切り日」に変更されるとよいかと思います。

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管理監督者や裁量労働制で働く者の労働時間管理は?

これまでは、管理監督者等の時間外・休日労働の割増賃金の支払義務が生じない人たちの労働時間の把握義務は必要ありませんでした。

しかし、先の働き方改革関連法によって2019年4月1日から、健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、全ての人の労働時間の状況が客観的な方法その他適切な方法で把握されるように、義務づけられています。

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地方自治体経営の医療機関であり、出勤管理は個人が押印する出勤簿で行っているが、タイムカード・ICカードの使用による管理に変更が必要か?

必ずしもタイムカード・ICカードでの管理に変更する必要はありません。

ただし、出勤簿のみでは出勤の管理は可能ですが、労働時間の把握ができているとは言えません。

労働時間短縮に向けた取組を行う上では、先ず、実態を把握することが重要であることから、ICカード、タイムカード等が導入されていない場合でも、出退勤の時間を上司が確認する等在院時間の的確な把握ができるようにしておかなければなりません。

なお、「上司」とは、労働時間の把握について労基法上の責任を負う者を想定しています。

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②勤務時間・休日・休憩・勤務シフト

労働時間について教えてください。

従業員の労働時間は、労働基準法によって制限が規定されています。
1日の労働時間は8時間まで。1週間の労働時間は40時間までです。

1日の労働時間が6時間を超え8時間以下であれば、45分以上の休憩時間を取せなければなりませんし、8時間を超えれば60分以上の休憩時間を労働時間の途中でとらせなければなりません。1日または1週間の労働時間の上限を超える場合、労使協定(事業主と労働者代表との書面による協定)を締結しなければなりません。

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医療機関における労働時間制度の活用について、どのようなものがありますか?

医療機関で活用される労働時間制度については、

  1. (1) 通常の労働時間制度における交代制勤務(2交代制、3交代制)
  2. (2) 1ヶ月単位の変形労働時間制

をとる方法が一般的です。

  1. (1)「通常の労働時間制制度における交代制勤務(2交代制、3交代制)」とは、法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間。但し、常時10名未満の労働者を使用する保健衛生業の場合は1日8時間、1週44時間。)を前提として、あるいはこれに36協定を導入した上で、その範囲内において、変形労働時間制をとることなく、1日の始業時刻・終業時刻を2区分や3区分し、設定する方法です。
    例として、午前7時から午後3時まで、午後3時から午後11時まで、午後11時から午前7時までの勤務の3交代制などです。
  2. (2)「1ヶ月単位の変形労働時間制」とは、労使協定または就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより1ヶ月以内の一定期間(単位期間)を平均して1週当たりの労働時間が40時間(常時10名未満の労働者を使用する保健衛生業の場合は44時間)におさまる場合であれば、単位期間の特定の日または週について、1日もしくは1週の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
    1か月単位の変形労働時間制の詳細(運用の手順、給与計算)については 厚生労働省のリーフレット を参照ください。

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「休日労働」とはどのような場合ですか?

「休日」とは、事業主と従業員との間での労働契約において労働の義務のない日をいいます。労働基準法では、休日は最低1週1日、または4週4日与えなければなりません。

このように労働基準法で定められた休日を「法定休日」といいます。

「休日労働」とは、「法定休日」に従業員に労働させることをいいます。
例えば、毎週日曜日が事業所での法定休日とすると、週休2日制で土曜日も休日だとしても、日曜日の勤務は「休日労働」ですが、土曜日の勤務は「休日労働」ではない、ということになります。

「休日労働」をさせた場合の割増賃金は労働基準法で35%と決められていますので、上記の場合は、日曜日に勤務した場合は35%の割増賃金の支払いが必要ですが、土曜日の休日に勤務した場合は35%の割増賃金の支払いは不要です。しかし、土曜日の休日に勤務した結果、週40時間を超える場合は「時間外労働」となり、25%の割増賃金が必要となります。

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「休日振替」と「代休」は、どう違うのですか?

「休日振替」とは、あらかじめ休日と定められた日を別の日に振り替え、その代わりに、あらかじめ休日と定められていた日を労働日(出勤日)とすることです。

このように、事前に休日振替をした場合は、本来の休日と労働日を入れ替えたことにより、休日労働としての割増賃金の対象にはなりません。(なお、振替を行った結果、新たに労働日となった週において、法定労働時間を超えることとなった場合は、時間外労働としての割増賃金を支払う必要があります。)

「代休」とは、休日労働をさせた後で、その休日労働の代わりに、他の労働日の勤務を免除するものです。「代休」の場合は、休日振替と異なり、事前に休日を労働日とする手続きが採られていないため、その日はあくまで休日のままで、その日に労働させることは休日労働となり、割増賃金の対象となります。

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「オンコール」の労働時間の取扱いについて教えてください。

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定))。

そして、オンコール待機中に実際の診療が発生した場合、当該診療に従事する時間は労働時間に該当します。呼出しから業務を開始するまで、業務終了から帰宅までの時間は、基本的には移動時間に含むものとして、労働時間にはカウントされません。

オンコール待機時間全体が労働時間に該当するかどうかについては、オンコール待機中に求められる義務態様によって判断する必要があります。

オンコール待機中に求められる義務態様は、医療機関ごと、診療科ごとに様々であり、呼び出しの頻度がどの程度か、呼び出された場合にどの程度迅速に病院に到着することが義務付けられているか、呼び出しに備えてオンコール待機中の活動がどの程度制限されているか等を踏まえ、オンコール待機時間全体について、労働から離れることが保障されているかどうかによって判断するもので、個別具体的に判断されるものです。

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医師の研鑽の労働時間該当性に関する考え方等について教えてください。

所定労働時間内において、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)において研鑽を行う場合、当該研鑽に係る時間は、当然に労働時間となります。

他方、所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者(以下「上司」という。)の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しません。

しかし、当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当するものとなります。

詳しくは、以下の二つの通達をご確認ください。

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勤務終了後の研修会への出席は、勤務時間とすべきですか?

研修会の性質によって、賃金が出る場合と出ない場合とに分かれます。

そもそも賃金は労働の対象として支払われるものであり、「労働時間」に対して支払われるものです。「労働時間」とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と解釈されます。これは労働契約や就業規則等の定めに関わらず、客観的に指揮命令下にあると判断される時間を指します。

すなわち、業務に必要な知識や技能の習得のため、又は院内の教育計画により行う研修会など、業務指示によって出ることが強制されている研修会は、まさしく「労働時間」となり、賃金の支払や、法定労働時間外であれば割増賃金支払の義務が生じます。

それに対して、完全自由参加の勉強会などは労働時間に該当しませんが、形式的に「自由参加」とされていても、参加しないと業務遂行に具体的な支障があったり、個人の評価に影響したりする場合には、自由参加ではない=「労働時間」とみなされます。

こうした点をクリアにするためには、研修会は原則的に勤務時間内に、勤務時間外に行うならば、労働時間か否かを明確にすべきと思われます。

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業務開始前の朝礼や準備は、どう取り扱うべきですか?

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、「労働時間の考え方」に“使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為、(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や、業務終了後の業務に関連した(清掃等)を事業場内で行った時間”とあり、労働時間として扱わなければならないとされています。

ただ、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される場合とあり、使用者の指示の強さで労働時間かどうか判断します。ガイドラインを参考にされ、朝礼や準備作業が指示なのか自主的なものなのか、改めて確認・整理しておかれることが大切です。
ガイドライン:0000149439.pdf (mhlw.go.jp)

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「持ち帰り残業」は、どう扱うべきですか?

原則として、私生活の場である自宅は、使用者の支配下にあるとはいえず、場所的拘束、時間的拘束などがないため、自宅に持ち帰って業務を行ったという事実があっても、それだけでは労働時間とは評価できません。

ですから、職員が自発的に持ち帰って行う業務は労働時間に該当しないと言えます。ただし、自宅作業が使用者の指揮命令によるものであった場合には、その程度によって判断されるべきです。

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「休憩時間」とは? どんな点に注意が必要ですか?

休憩については、労働基準法第34条に「使用者は、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定められています。

つまり「休憩時間」は使用者が与えなければならない「労働者が労働から離れることを保障された時間」であり、休憩を取れない(あるいは取らない)場合は、使用者が労基法違反を問われるということに注意が必要です。

例えば人数が少ない等の理由で、ナースセンターや事務室から離れないことを義務付け、ナースコールや来客があった時には対応をさせるというケースは、「労働から離れることを保障されていない」と言えますので、基本的には「休憩時間」とは扱えなくなります。

一度、皆様の職場の休憩時間について、見直してみて下さい。

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夜勤中、忙しくてとれなかった休憩時間は?

労基法34条には、

  • 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分。8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
  • 使用者は休憩時間を自由に利用させなければならない。

と規定されています。

休憩時間については、免責の規定はなく、したがって、その日が多忙であっても、一息ついた時間帯を利用するなどして、休憩時間を確保する努力は必要です。休憩時間は分割でもよいとなっています。

それでも休憩をとれなかった場合においては、(法違反でなくなるわけではありませんが)当該者の了解のもとに残業割増手当をといった配慮も解決策の一つです。

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副業の労働時間管理はどうするのですか?

2020年9月に副業・兼業に関するガイドラインが公表され、労働時間通算の考え方や管理モデルなどが示されました。

労働時間通算のポイント
  • 時間外労働の上限規制の通算(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)
  • 適正な36協定の締結

時間外労働の上限規制は通算して適用されるため、他事業場の時間外労働の時間を把握しつつ、上限を超えないように使用者間で調整が必要になります。

また、所定外労働は労働契約締結の先後の順に通算するため、後になる事業場は先の事業場の労働時間を加味した限度時間を36協定で締結する必要があります。

労働時間管理のポイント
  • 他事業場の労働時間は、労働者本人の申告等により把握する。
  • 他事業場の労働時間は、日々把握する必要はなく、適宜報告させることで足りる。
  • 他事業場とあらかじめ労働時間の上限を設定する。

各使用者は他事業場の労働時間を把握するため、副業・兼業を届出制にしたり、労働時間の自己申告について規定化したりすることが考えられます。

また、使用者間であらかじめ労働時間を設定し、その時間について各々が管理することで、設定した労働時間を超えない限り、労働者からの報告を省略することもできます。

医療の場合、大学病院等から地域病院への医師の派遣においては、派遣元、派遣先、医師本人がよく話し合って各々の労働時間の上限を決めることが考えられます。

また、医師個人の希望による兼業・副業の場合は、本人からの自己申告に基づいて各々が労働時間の上限を決めればよいことになります。

なお、2024年4月から医師の時間外・休日労働の上限規制が始まりますが、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」において、「医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するために必要な役割を担う医療機関」については、(B)水準(年間時間外・休日労働の上限1860時間)の適用を認める方向性が示されました。
副業・兼業の促進に関するガイドライン(改訂版)

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③年次有給休暇

勤務日が少ない非常勤にも、有給休暇は付与しなければならないのですか?

週所定労働日数4日以下(年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対する年次有給休暇

週所定
労働日数
1年間の
所定
労働日数
勤務期間
6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月
4日 169~216 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~ 72 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

※週1日の臨時職員であっても、6か月勤続勤務すると1日の有給休暇が必要です。

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有給休暇の買い上げはどんな時認められますか?

年次有給休暇の本来の趣旨は、「一定期間継続的に勤務した労働者の心身の疲労を回復させ、…」とあり、休暇期間中の賃金を保障することにより労働者が安心して休養し、ゆとりある生活の実現にも資することを目的としています。「お金をあげるから休ませずに働かせる」という、いわゆる年次有給休暇の買取りは、「休むこと」を目的とした制度の趣旨を没却するものになることから、原則として認められていません。

ただし、以下の例外があります。

  1. ①法律で認められた日数より多く年次有給休暇を与えている場合に、その超えた部分のみを買い取る
  2. ②消滅時効(2年)にかかり、消滅してしまった部分の年次有給休暇を買い取る
  3. ③退職時に行使しきれずに残ってしまう年次有給休暇を買い取る

以上の3つのケースに該当する時に限って、年次有給休暇の買取りが認められています。

しかしながら、使用者には買取義務はありませんので、実際に買い取るかどうかは病院の判断次第ということになります。

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年5日の年次有給休暇の確実な取得とは何ですか?

年次有給休暇は、働く方の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。しかし、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため、労働基準法が改正されて、2019年4月から、すべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務化されました。

ポイント1:対象者
年次有給休暇が10日以上付与される労働者
ポイント2:年5日の時季指定義務
使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時期を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。
ポイント3:時期指定の方法
使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。また、できる限り労働者の希望に沿った時期指定になるように聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
ポイント4:時期指定を要しない場合
既に年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時期指定をする必要はなく、また、することもできません。
ポイント5:年次有給休暇管理簿
使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。
ポイント6:就業規則への規定
使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時期指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。
基準日を統一したり、計画表を作成するなど、また仕事はチームで行い休みやすい職場環境を構築するなど休暇取得に向けた環境づくりに取組みましょう。

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年休の5日取得義務について、新人職員の取扱いは?

採用時点で一部を前倒し付与し、6か月経過時点で残りをといったように、分割して付与している場合には、付与日数の合計が10日に達した日から1年間に5日の指定義務がかかります。

しかし、その日以前に、分割して前倒しで付与した年次有給休暇を労働者が自ら取得していた場合には、取得した日数を5日の指定義務から差し引くことが出来ます。

厚生労働省のパンフレット:「年次有給休暇の時季指定義務」 

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年休の5日取得義務について、休職中の職員に対しては?

例えば、年休の基準日から1年間の間ずっと休職中であった場合など、使用者にとって義務の履行が不可能な場合は法違反は問われません。

また、基準日から1年間のうち途中から休職した場合や、逆に途中から復職した場合などで、当該1年間から休職期間を除いた残りの期間における労働日が、使用者の指定すべき年休の残日数より少ない場合も義務の履行は不可能となります。

逆に当該残りの期間における労働日が5日以上ある場合は、取得状況について注意しましょう。

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年休の5日取得義務について、パートタイマーも対象になりますか?

パートタイマー労働者でも週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上の労働者(1年間の所定労働日数が217日以上)は、一般の労働者と同じ有休が付与されますので、年5日の取得義務があります。

それ以外のパートタイマー労働者でも、所定労働日数に応じて比例付与され、有休が10日以上付与されると、5日の取得義務の対象になります。

10日とは残日数ではなく、1年間に付与される日数をいいます。

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育児休業から復帰した職員に、次の付与日までの5日取得義務は生じますか?

育児・介護休業、産前産後休業、子の看護休業、介護休業などの期間は、有給休暇付与日数の計算には「出勤した日とみなして」取り扱わなければなりません。

育児休業を終えて復帰した日から次の有給休暇付与日までの日数が5日以上あればその間は、5日の有給休暇を取得させる義務があります。

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付与日と付与日の間で労働契約が変更になった場合、有給休暇どう変わりますか?

年次有給休暇の付与日数は、基準日(付与日)の状況によって判断されます。(基発150、S61)

勤務形態が切り替わる段階においては残日数がそのまま継続され、次の付与日に、その時点での勤務形態に基づいた日数が付与されます。なお、継続して勤務していますので、勤続年数は通算して計算されます。

正職(フル)からパート、パートから正職(フル)に代わる場合も、考え方は同じです。

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育児休業中でも年次有給休暇は発生しますか?

労働基準法では、①雇い入れの日から起算して6か月間継続勤務し、②全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10日の年次有給休暇を与えるとなっています。以後、継続勤務年数に応じて所定の日数が加算されます。

育児休業中の者も継続勤務していることになるので、①はクリアしています。②の出勤については、業務上の傷病により休業した期間、育児・介護休業した期間、産前産後のため休業した期間は出勤したものとみなされますので、実際の出勤日と合わせて8割以上出勤している場合は、継続勤務年数に応じた、新たな年休が付与されます。

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定年後再雇用者の年休付与日数について

定年後の再雇用にあたっては、継続勤務しているものとみなして、勤続年数を通算することとされています。

例えば、正職員として6年6ヶ月以上勤務した職員が定年後再雇用された場合は、定年再雇用時に付与されていた年次有給休暇は、そのまま保持することになり、さらに前年度に消化していない繰越日数がある場合は、そのまま継続して保持することとなります。

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年次有給休暇は、時間単位で取得が可能と聞きましたが、どのような手続きが必要ですか。

労働基準法第39条は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨から、毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定しています。年次有給休暇は原則1日単位ですが、治療のために通院したり、子どもの学校行事への参加や家族の介護など、労働者のさまざまな事情に応じて、柔軟に休暇を取得できるよう、労使協定の締結により、年5日の範囲内で、時間単位での取得が可能となります(労基法第39条第4項)。

時間単位の年次有給休暇制度(以下「時間単位年休」といいます。)を導入する場合には、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則に年次有給休暇の時間単位での付与について定めることが必要です。

そして実際に時間単位年休を導入する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定(労使協定)を締結する必要があります。なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。
労使協定で定める項目は次のとおりです。

【時間単位年休の対象者の範囲】
対象となる労働者の範囲を定めます。仮に、一部の者を対象外とする場合には、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。
【時間単位年休の日数】
1年5日以内の範囲で定めます。
【時間単位年休1日分の時間数】
1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてください。
(例)所定労働時間が1日7時間30分の場合は8時間となります。
【1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数】
2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定めます。
なお、平成31年4月より、使用者は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、年5日の年次有給休暇を確実に取得させることが必要となっていますが、時間単位年休の取得分については、確実な取得が必要な5日から差し引くことはできませんので、注意が必要です。
就業規則への記載、労使協定例は「働き方・休み方改善ポータルサイト」を参照ください。

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④夜勤

育児休業復帰後に深夜勤務免除の申し出があれば、全て認めなければなりませんか?
深夜業免除申出の条件
深夜においてその子を常態として保育できる同居の家族がいる場合は請求できません.※常態として保育できる同居の家族とは、16歳以上の同居の家族で、
  1. ① 深夜に就業していない者(深夜の就業が1か月について3日以下の者を含む)
  2. ② 負傷・疾病により子の保育が困難でない者
  3. ③ 6週間以内に出産予定でないか、又は産後8週間以内でない者

申出→事業の正常な運営を妨げないか検討・審議→承認

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⑤その他(宿日直・WLB・育児休業給付金)

医師、看護師等の宿日直許可基準について教えてください。

そもそも、使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間は、手待時間として労働時間とみなされるのが原則です。

しかし、労働密度がまばらであり、労働時間規制を適用しなくとも必ずしも労働者保護に欠けることのない一定の断続的労働に従事するものについて、労働基準法上、労働基準監督署長の許可を受けた場合に労働時間規制を適用除外しています。

これは、通常の労働者と比較して労働密度がまばらであり、労働時間、休憩、休日の規定を適用しなくても、必ずしも労働者保護に欠けるところがないので、労働時間規制が適用除外となっています。但し、緊急の対応等を行った場合は、その時間は労働時間とされます。

そして、「断続的労働」の一態様である「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」については、所定労働時間外又は休日における勤務であって、労働者の本来の業務は処理せず、構内巡視、文書・電話の収受又は非常事態に備えて待機するもので、常態としてほとんど労働する必要のない勤務が許可の対象とされているところですが、医療法第16条の規定により「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」とされている関係から、医師・看護師等の本来業務であっても特定の軽易な業務については、宿日直勤務中に処理しても差し支えないこととなっています。

詳しくは、以下の二つの通達をご確認ください。

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ワーク・ライフ・バランスの実現のためには、労使の自主的な取組が重要とされ、具体的な手法等として「労働時間等見直しガイドライン」も策定されているようですが、その内容を端的に教えてください。

まず、取組体制を整備するポイントとして、①労働時間等の実態を時間当たりの業務負担の度合いなども含めて把握し、②労使が話し合う機会を整え、③個別の要望・苦情に対応できる体制をつくり、④業務を見直し、⑤取組計画を作成して取組むことが挙げられます。

そして、一般的な取組メニューとして、①多様な事情や業務の態様に対応した労働時間制度(変形労働時間等)、②年次有給休暇を取得しやすい環境の整備(雰囲気づくり・計画的付与・取得率の目標設定の検討・長期休暇の取得促進・時間単位による取得等制度の活用)、③時間外・休日労働の削減(労働時間に関する意識改革・「ノー残業デー」「ノー残業ウィーク」の導入や拡充等)、④労働時間管理の適正化、⑤多様な正社員、ワークシェアリング、テレワーク等、⑥勤務間インターバル等があります。

また、労働者の個別の事情に配慮した労働時間等の設定を改善するための取組として、①心身の健康保持に配慮する必要がある労働者(メンタルヘルスケアの実施等)、②育児介護をする労働者(男性が育児等に参加しやすい環境を作る等)、③妊娠中や出産後の女性労働者(妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)④公民権の行使・公の職務の執行をする労働者(公民権の行使・公の職務の執行のための休暇制度等)、⑤単身赴任・自己啓発・地域活動を行う労働者(始・終業時刻の繰上げ・繰下げ等)などがあります。
(参考)パンフレット

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育児休業給付金をもらいながら少し働くことは可能ですか?

育児休業期間であっても、その就労が臨時、一時的であって、就労後も育児休業をすることが明らかであれば、職場復帰とせず支給要件を満たせば支給対象になります。

育児休業給付金をもらいながら働く条件は、

  1. 1)1か月に10日以下、又は10日を超える場合は1か月80時間以下の 勤務であること
  2. 2)子を保育園にあずける場合でないこと

なお、給付金(賃金月額67%(50%))と育休中の賃金の合計額が、賃金月額の80%以内であれば給付金の減額はありません。

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2. 健康管理に関すること

①健康確保・健康診断

月80時間超の医師に対し通知はするものの、本人が希望せず、産業医の面接指導が未了の場合、法的な責任は及びますか?

産業医の面接指導は、本人が希望した場合に行うものであり、希望がないのであれば雇用者側に責任はないが、引き続きの勧奨には努力してください。

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安衛法に定める産業保健の仕組みは、医療機関の内部で完結してしまい(勤務医の上司、同僚が産業医など)活用しにくい。産業保健の仕組みの活用を図るためにどのような取組が有効ですか?医療機関の産業保健活動の優良事例はありますか?

産業保健の仕組みを活用するため、例えば、単に役職として産業医を任命するだけではなく、社内組織を見直し、産業医に独立的な地位と必要な権限を与えることも1つの方法です。
(※なお、産業医は事業者を指導助言する立場であることに鑑み、「産業医の選任の改善について」(平成27年10月30日付け基安発1030第2号)において、法人の代表者又は事業経営主(事業者の代表者)、事業場においてその事業の実施を総括管理する者(事業場代表者)を産業医として選任することは適切でなく、選任している場合は早期に改善する必要があります。)

その他、具体的な事例については、全国47の都道府県に産業保健総合支援センターを設置し、産業保健関係者からの相談対応や実地相談を実施しており、好事例等の紹介もしているので活用していただきたい。

なお、第196回通常国会で成立した「働き方改革関連法」には、長時間労働者等の健康確保対策の強化として、事業者は、労働者が安心して産業医等による健康相談を受けられるようにするために必要な体制整備等を講じるよう努めなければならないこととする内容が盛り込まれていますので、このような仕組みづくりを検討下さい。

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健康診断の事後措置について教えてください。

事業者は、健康診断の結果(健康診断の項目に異常の所見があると診断されたものに限る)に基づき、健康保持のために必要な措置について、医師又は歯科医師の意見を聴かなければなりません(労働安全衛生法(以下「安衛法」)第66条の4参照)。

この意見聴取の義務は、事業場の規模にかかわりなく(産業医の選任義務の有無にかかわりなく)課されています。

なお、意見聴取は健康診断が行われた日から原則として3カ月以内に行い、聴取した医師または歯科医師の意見を健康診断の個人票に記載することとされています(労働安全衛生規則(以下「安衛則」)第51条の2参照)。

そして、健康診断の結果についての医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、その職員の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設または設備の設置・整備、医師又は歯科医師の意見の衛生委員会等への報告その他の適切な措置を講じなければなりません(安衛法第66条の5参照)。

また、職員が自らの健康状態を把握する必要があることから、健康診断の結果を職員に対して遅滞なく通知することが事業者に義務付けられています(安衛法第66条の6、安衛則第51条の4参照)。

さらに、職員自身による自主的な健康管理を促進するため、健康診断の結果所見を有するような職員に対して、どのようにして健康管理を行うかについて、医師又は保健師による保健指導を実施することが事業者の努力義務となっている一方、職員についても、健康診断の結果や保健指導を利用して健康管理に努めることとされています(安衛法第66条の7参照)。

事業者は、健康診断個人票を5年間保存し(安衛法第66条の3、安衛則第51条参照)、定期健康診断等の結果報告書を所轄の労働基準監督署長に提出(職員(労働者)数が常時50人以上の場合)しなければなりません(安衛則第52条参照)。

なお、定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する検診項目(血圧・血中脂質・血糖・腹囲または肥満度)のすべてに所見が見られた場合等に、二次健康診断及び特定保健指導を、労災保険給付の現物給付として無料で受けられます(申請行為が必要であること、請求期間の制限などがあります)。 具体的な措置に関しては、 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針 が参考になります。

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②メンタルヘルス

なぜ職場でメンタルヘルス対策をしなければならないのですか?

企業は、労働基準法や労働安全衛生法などの労働関係法令によって、従業員の健康管理義務を負っており、従業員のメンタルヘルス管理も、労働法令に定められた事業主の義務に含まれています。

また近年では、業務に起因するうつ病などのメンタルヘルス不調により自殺に至り、企業の安全配慮義務違反や社会的責任等が問われ、民事訴訟では非常に高額な賠償命令が出されるなど、リスクマネジメントの観点からも企業の対応が進められています。

メンタルヘルス対策の強化として、国は平成17年10月に労働安全衛生法を改正して「長時間労働者の医師による面接指導の義務化」を施行し、平成18年3月に「労働者の心の健康保持増進のための指針」を公表しています。そして平成27年12月からは、常時50人以上の労働者を雇用する事業場に対し、ストレスチェック制度の実施を義務付けました。

また、平成19年12月には労働契約法が制定され、事業者の労働者に対する安全配慮義務(健康配慮義務)が明文化されました。

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メンタルヘルス対策を効果的に進めるためのポイントや、医療従事者の特性に応じた取組のポイントを教えてください。

ストレスやメンタルヘルス不調の背景には、職場における人間関係やハラスメント、過度な長時間労働等、様々な要因があります。メンタルヘルス対策を効果的に進めるためには、職場環境における課題を把握し、改善を図ることが重要です。

ただし、ある一時点の状況を切り取ったり、単に労働時間が長いことを理由として、ストレス度が高い職場・低い職場と決めつけることは望ましくないことに留意が必要です。

そして、各事業場において職場環境における課題を適切に把握するとともに、次のような取組を進めることが重要です。

  1. (1)メンタルヘルス対策に関する方針の表明
    メンタルヘルス対策は、労働者、管理監督者等、それぞれの立場で取り組むことが重要です。メンタルヘルス対策に取り組むことを労働者に周知し、理解・協力を促すとともに、経営層を巻き込んだ組織的な取組につなげていきます。
  2. (2)メンタルヘルス対策に関する計画の策定・見直し
    メンタルヘルス対策が継続的かつ計画的、組織的に行われるようにするためにも、労使の協議のもと、事業場の実態に即した取組を行う必要があります。そのためには、衛生委員会等を活用し、メンタルヘルス対策の計画を策定することが効果的です。
  3. (3)事業場外資源の活用
    事業場によっては、メンタルヘルス不調者への対応が難しい場合があります。そのような場合には、事業場外資源を有効に活用することが重要です。
  4. (4)関係者への理解・協力の呼びかけ
    取組を進めるために、関係者の理解・協力が必要な場合があります。対策を一緒に検討することで、理解・協力を確保する方法があります。

また、医療従事者の特性に応じた取組のポイントについては、医療は人の命や健康を預かる仕事であるため常に高い緊張にさらされており、安全性を確保しながら適切な医療・きめ細かなケアを提供するためにも、医療従事者の負担軽減による働きやすい職場づくりの重要性が増していることに、まず留意が必要です。

そして、医師や看護職員を対象とした調査(平成30年版 過労死等防止対策白書)では、業務に関連したストレスや悩みとして、医師では「個別患者の様子」のほか「休日・休暇の少なさ」や「患者(家族)からのクレーム対応・訴訟リスク」が、看護職員では「職場の人間関係」や「夜勤の負担の大きさ」が上位に挙げられ、看護師等の精神障害の労災認定事案をみると、事故への遭遇や災害の体験にまつわるものや、暴力を受けたものがあります。

したがって、医療従事者における心身の健康を確保するためには、過度の長時間労働の是正や夜勤負担の軽減、対人関係に関する対策に取り組むことが重要であり、看護師等については、事故への遭遇や災害の体験、暴力等に関する予防と事後措置の取組も重要です。

また、相談しやすい環境づくりも重要です。

業種や職種が違っても、参考になる取組も多くあるため、こちらの「事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集」が参考になります。

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メンタル不調による休職者からの「短時間からの復職申し出」は認めなければならないの?

復職の判断基準としては「労働契約上求められている労働力が提供できるか、否か」ではありますが、具体性に欠け現場では悩ましいところです。不完全な回復状態で勤務させて症状を悪化させると、管理者の安全配慮義務違反を問われかねません。産業医の意見も聞くことになりますが、ご質問の状態は明らかに通常勤務時間には及ばない短時間でしょうし、復職を拒否することは可能と考えます。回答として、無給でのリハビリ試行出勤の提案はいかがでしょうか。

メンタル不調は今や当たり前の事象となりました。是非、休職者の「復職判断基準」を具体的に就業規則または関連規定に掲げておくようにして下さい。

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3. 職場の環境整備に関すること

①いじめ・ハラスメント等

パワハラ対策に取り組むことが事業主の義務になったそうですが、 どのような内容ですか?

令和2年6月5日、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が公布されました。

パワハラ防止法は、パワハラの基準を法律で定めることで、具体的な防止措置を事業主に義務化することを目的に作られました。

厚生労働省が告示した「職場におけるハラスメント関係指針」には、具体的なパワハラの防止措置として次のことが記されています。

  1. ① 企業の「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者への周知、啓発を行うこと
  2. ② 労働者からの苦情を含む相談に応じ、適切な対策を講じるために必要な体制を整備すること
  3. ③ 職場におけるパワハラの相談を受けた場合、事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処を行うこと
  4. ④ プライバシーの保護のために必要な措置を講じること
  5. ⑤ パワハラの申告を理由に、労働者の解雇や不利益な取り扱いをしないこと大企業の場合は令和2年6月1日から、中小企業の場合は令和4年3月31日までの努力義務期間を設けたうえで、令和4年4月1日から施行されます。

職場におけるパワハラの定義とは、

  1. ① 優越的な関係を背景とした言動
  2. ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. ③ 労働者の就業環境が害されるもの
    これらの3つの条件が全てそろった場合にパワハラとみなされます。正社員だけではなく、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなども該当します。

なお、 客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲だと判断される適正な業務指示、指導はパワハラにはあたりません。

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②職場内施設の整備

③その他(職場の環境整備)

4. 労働条件等に関すること

①労働契約等

職員を雇う際に、労働条件を通知しなければならないということですが、具体的にはどうしたらよいですか?
職員採用時、口約束のみで済ませているケースが多く、職員から「求人票を見て応募し、採用されたが、実際に働き始めたところ、求人票記載の労働条件と異なっている」と言われた等、「言った、言わない」「聞いた、聞いていない」といった雇入れ時のトラブルに関するご相談が増えています。
労働基準法では、使用者が労働者を雇い入れる際には、賃金や労働時間等の労働条件を明確に記載した書面を作成し、交付することが義務付けられています。
①必ず明示する事項(下記の(1)から(7)の事項)、②定めた場合に明示する事項(退職手当、安全衛生、職業訓練、休職等))があり、③労働条件通知書などの書面を交付する事項として(1)から(6)の事項があります。
  1. (1) 労働契約の期間に関する事項
  2. (2) 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. (3) 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  4. (4) 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交替制勤務の場合の就業時転換に関する事項
  5. (5) 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項
  6. (6) 退職(解雇の事由を含む)に関する事項
  7. (7) 昇給に関する事項

さらに、パートタイム労働者の場合には、上記に加えて、①昇給の有無、②退職手当の有無、③賞与の有無、④相談窓口についても明示することが必要です。

労働条件を必ず明示して、労使がお互いに納得のいく雇用契約を締結しましょう。

また、医療機関の皆様方が適正な労務管理について必要な知識を十分にお持ちいただくことが、労使間のトラブル未然防止に有効であると考えます。

※なお、厚生労働省ホームページから「労働条件通知書のモデル様式」がダウンロードできます。
主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

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長期の労働契約を結ぶ場合の注意点について教えてください。
労基法では、労働契約の期間については、原則として3年を超えてはならないとしていますが、次の2種類の労働契約については5年としています。(労基法14条)
  1. (1) 専門的な知識、技術又は経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識を有する労働者との間に締結される労働契約
    具体的に医療関係としては、⓵博士の学位を有する者 ⓶医師 ⓷歯科医師 ⓸薬剤師など
  2. (2)満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約
    この場合、高度専門知識等の制約がないので、一般業務従事者でも5年契約を結ぶことも、更新することも可能です。

なお、長期契約は、長く働いてもらえる長所がありますが、反面、定めた雇用期間中の雇用責任があり、途中解雇の場合は、期間の定めのない契約における解雇権乱用法理より制約が厳しいものとなることに注意が必要です。

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雇用契約と就業規則、どっちが有効ですか?

この場合は、就業規則や規程の方が優先されます。

労働契約法第12条に「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と規定されています。

しかし、逆に雇用契約の方が労働者に有利な場合は雇用契約が優先されます。

いずれにしましても、就業規則は、管理する側と労働者との主張の違いを埋める重要な根拠となります。労使の信頼関係を保つためにも、日ごろ就業規則の記載内容には注意を払うようにしましょう。

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②就業規則・給与制度・人事制度

常時10人以上を使用する使用者は就業規則を作成し届ける必要があるということですが、パートの多いクリニック等ではどう扱うべきですか?

「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則を作成し、届け出なければならないとされています(労基法89条)

この場合の「常時10人」とは、常用雇用の労働者が10人ということではなく、その事業場に常時何人ぐらいの労働者を使用しているかが判断基準になります。これは、いつでも常にということではなく、大体10人以上いるが、時には下回るという場合は該当します。逆に、いつもは10人いないが、繁忙期には増員するといった場合は、当てはまらないと考えられます。

雇用形態の差(正職員・パート)は問題とならず、事業場としていつもは何人いるかが問題です。

正職員、パートが混在する場合、作成する就業規則は正職員用だけとはならず、パートタイマーに適用する就業規則も作成する必要があります。正職員用の就業規則をパートタイマーにも適用すれば、法律的にはいいのですが、雇用形態で労働条件(賃金制度・退職金制度等)が異なる場合、それぞれに適した就業規則を別個に作ることが実務上必要になってくると思われます。

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就業規則にはどのようなことを記載すればいいでしょうか?

就業規則に記載する内容には、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」があります。

絶対的必要記載事項とは、必ず記載しなければならないもので、勤務時間、休憩、休日、休暇、賃金、退職に関することが当てはまります。
絶対的必要記載事項は次のとおりです。

  1. 労働時間関係
    始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
  2. 賃金関係
    賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 退職関係
    退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)

相対的必要記載事項とは、会社で独自に定めているもの(退職手当、賞与等の臨時の賃金、安全及び衛生等)があれば、記載しなければならないこととなっています。
相対的必要記載事項は次のとおりです。

  1. 退職手当関係
    適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  2. 臨時の賃金・最低賃金額関係
    臨時の賃金等(退職手当を除きます。)及び最低賃金額に関する事項
  3. 費用負担関係
    労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項
  4. 安全衛生関係
    安全及び衛生に関する事項
  5. 職業訓練関係
    職業訓練に関する事項
  6. 災害補償・業務外の傷病扶助関係
    災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰・制裁関係
    表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
  8. その他
    事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項

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小さなクリニックでも人事評価制度は必要ですか?

必要です。特に今後は同一労働同一賃金の時代になり、職員間で待遇面に差がある場合、合理的な説明が必要となります。 この合理的な説明は、責任、職種、労働時間等によって説明しますが、勤務成績等により給料に差をつけるのであれば、その根拠となる人事評価制度が必要となります。 職員数名だからといっても、人事評価制度をきちんと運用した上で給与や賞与が決定されなければ、不合理な賃金差別となる可能性があるのでご注意ください。

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③その他(労働条件等)

勤務体制などの労働条件を変更したいと考えています。どんなことに注意しなければならないでしょうか。

労働条件の変更は、就業規則や労働協約によるか、個々の労働者の個別の合意を得ないといけません。労働者の同意のない一方的変更は、労働基準法第2条により無効です。

労働者が労働条件の一方的不利益変更に同意していた場合でも、法令、労働協約、就業規則に違反しているときには、不利益変更の同意は無効ということになります。労働条件の変更を行う際は、「合理性」に配慮しなければならないとされています。

合理性は、次のような要素を総合的に判断して行われることになります。

  1. (1)労働者が被る不利益の程度
  2. (2)事業所の必要性の内容・程度
  3. (3)変更内容自体の相当性
  4. (4)代償措置その他の労働条件の改善状況
  5. (5)労働組合などとの交渉の経緯
  6. (6)同種事項に関する社会一般の状況
  7. (7)特に大きな不利益を被る者への経過措置(激変緩和措置)

これらのことを踏まえて変更の協議を行ってください。

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当院は就業規則で「副業」を原則、禁じていますが、認めなければいけないのですか?

厚生労働省は、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図るために「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、また、2018年1月に副業に関するモデル就業規則を改定し、従来の許可制から、就業時間以外の時間には届出により副業・兼業ができることを原則とすると大きく方針転換しました。

例外として副業を禁止または制限する場合として、モデル就業規則では、

  1. ①労務提供上の支障がある場合、
  2. ②企業秘密が漏洩する場合、
  3. ③会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、
  4. ④競業により、企業の利益を害する場合

を列挙しています。

就業規則で「副業を原則禁止」と定めること自体は違法ではありませんが、病院の業務に支障がない限り、副業をしたからといって懲戒処分をすることはできないと思われます。

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5. 働き方改革に関すること

① 時間外労働の上限規制

医師以外の医療従事者における時間外労働の上限規制について教えてください。

長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。

長時間労働を是正することによって、ワークライフバランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結び付きます。

このため、働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。

医師以外の医療従事者は、全ての職種で一般則が適用され、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできません。また月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月までです。

臨時的な特別の事情があり労使が合意する場合は、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働を併せて月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする必要があります。
(医師は、別基準により2024年4月1日以降の適用。今後省令で定められる)

いずれにしても、36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合には、労働基準法32条違反となります(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。また、36協定に定めた時間数にかかわらず、上限の時間を超えた場合には、労働基準法36条第6項違反となります(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。よって、時間外労働を行わせるためには、36協定の締結・届出及び労働時間の把握が必要であり、適正に管理する責務が求められます。

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医師の労働時間上限規制適用(2024年4月)までに、先ずは何から取り組んだらいいでしょうか?

先ず、各医療機関において時間外労働時間の実態を的確に把握する必要があります。適正な労務管理は、(B)・(C)水準の適用の大前提ですので、厳しい実態にある病院は、特にお急ぎ下さい。【ステップ1】

その上で、各医療機関は残された機関で医師の労働時間を着実に短縮する必要がありますが、その「短縮幅」は、適用される上限の水準によって変わってきます。(B)水準の適用対象となる地域医療提供体制における機能を有するかどうか、また、やむなく長時間労働となり、(A)水準まで到達できないか等について、各医療機関において現状及び将来(2024年)を見通して検討します。【ステップ2】

そして、実際に医師の労働時間を短縮していくべく、各医療機関においては、医療機関内で取り組める事項についてなるべく早期に医師労働時間短縮計画を作成し、PDCAサイクルによる取組を進めます。【ステップ3】

2024年4月以降、BC水準以外の病院では960時間以上働かせることはできなくなります。また、BC水準の病院であっても1,860時間以上は認められません。現在960時間以上の時間外労働の実態があり、BC水準の指定を受けたい病院は、労働時間短縮計画を作成して県に提出し、また評価機構による審査を受ける必要があります。

(参照)「医師の働き方改革の推進に関する検討会」中間とりまとめ
医師労働時間短縮計画策定ガイドライン(案)」等

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②タスク・シフティングの推進

タスク・シフティングとは?

厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」での報告書の中で提言された医療機関における「業務移管」のことです。厚生労働省では働き方改革に向けた緊急的な取組として、医師事務作業補助者や特定行為研修を修了した看護師等を活用し、他の医療スタッフへの分業を積極的に推進して、医師の労働時間短縮を図ろうという方針を打ち出しました。

厚生労働省には「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」が設置され、継続的に審議されてきた議論の整理が、令和2年の12月23日付けで公表されたところです。

今後は法制化に向けた準備が進められ、通常国会に法案提出されるという流れです。

なお、令和元年度より、タスク・シフティングの支援に向けたタスク・シフティング等勤務環境改善推進事業(補助事業)も実施されています。

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③年5日の年次有給休暇の確実な取得

年5日の年次有給休暇の確実な取得とは何ですか。
(前記1-③に掲載)

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④同一労働同一賃金

⑤労働者派遣

⑥その他(働き方改革)

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するにはどの様な定めが必要となりますか?

労使協定または就業規則その他これに準ずるものに、 その旨を規定することが必要となります。

労使協定により定める場合と、就業規則その他これに準ずるものにより定める場合では、基本的に定める事項に違いはありませんが、労使協定による場合には有効期間の定めが必要になります。

(参考)【労使協定または就業規則等で定める事項】

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 変形期間 (必ずしも1か月間である必要はなく、1か月以内の期間であればよい。例えば4週間などの設定でも可。)
  3. 変形期間の起算日
  4. 変形期間を平均し、1週間あたりの労働時間が週法定労働時間を超えない定め
  5. 変形期間における各日・各週の労働時間
  6. 各労働日の始業・終業時刻

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6. その他の労務管理Q&A

職員が定着する良い方法はないか?
  1. ① 社会保険への加入
    個人の診療所では国保の事業所も多いと思いますが、国保は職員が全額負担するものであり、給付も社会保険より乏しいです。個人事業でも社会保険には入れるので加入を検討しましょう。
  2. ② ルール・経営理念の明確化
    ルールが不明確であったり確固たる経営理念がなければ不安になって辞めてしまいます。経営理念や就業規則をきちんと整備しましょう。
  3. ③ 人材育成システムの整備
    「見て覚えろ」というやり方では人手不足の時代すぐ辞められてしまうし、人材育成ができていないと患者にも不安を与えます。誰もが成長できる人材育成システムを整備しましょう。
  4. ④ 組織のコミュニケーションの徹底
    コミュニケーション不全の職場では職員に孤立感を与えたり、思わぬ事故に繋がります。

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